はじめに

長雨書房(ながめしょぼう)は、多摩美日本画を卒業した7人のアーティストによる創作グループです。

 

0.理由をなくして

外は雨が降っている。
ほんとうは、もういかなくちゃいけない。
でも、外は雨が降っているから
もう少しだけここにいてもいい?

わたし、ここが好きなの。
安全で安心で
何もかもが許された長雨の内側。
外は雨が降っている。
道は流されてしまったかもしれない。
川はあふれているかもしれない。
もし、消えてしまっても
誰も気づかないかもしれない。

わたし、ここが好きなの。
雨はわたしに時間を許してくれる。
時間を狂わせることを許してくれる。
針の止まった時計と、逆さまのてるてる坊主を握りしめ
雨の道を辿り続ける。
きっと、この雨が止んだら
あの子の家に虹が降ることを願わなくてはいけないだろう。

ほんとうは、もういかなくちゃいけないことは分かっていた。
永遠のような今日が
永遠の今日には
決してならないことを知っていたから。
静かな音がやむ。
理由をなくしたわたしは
もういかなくちゃいけないけれど
それでも
わたしたちはここが好きだから
長雨のあわいから滲んでいた
あのまっしろな眺めの先で

ここがなくならない明日を見つけたい。